人はみな、誰にもなれない誰かになりたいという気持ちを孕んでいるのだろう。

でも、大抵の人はその気持ちを孵化させることができずに、或いは、自分が孕んでいることにすら気づかずに、死んでいくんだ。

そうして生を失った人間は、己の命に価値を見出せず、生を持った人間に縋って生きていくのだろう。